星 の て が み

神はいるか?

山口 義人[やまぐち よしと]
 

「TRONは世界標準競争で勝てるか!?」という本を出版した。(日刊工業新聞社) コンピューターのソフトは、ウィンドウズに支配されているパソコン中心の世界から、 ユビキタスコンピューティングの時代に変わりつつあるが、その基本ソフトは日本発の「トロン」になるべきだ、という信念に基づいて書いたものである。

その時、改めて、神の存在を徹底的に問い直してみた。ユビキタスとは、「神の遍在」という意味である。1968年に封切られた「2001年宇宙の旅」という映画では、人間の知恵、知識をはるかに超えるHALというコンピュータ(これは当時IBMのコンピュータが世界を制覇するという予想だったので、そのIBMを、アルファベットの順番で、一字づつ上まわるという意味なのだが)が宇宙船を乗っ取り、人間を未知の世界へ連れて行く話。 

しかし2001年は既に過ぎ、第五世代コンピュータなども結局実現せず、コンピュータが人間を支配することはなかった。

しかし、これからの世界は、神がどこにでも遍在するように、どんなもの、どんなところにもコンピュータが付着され、それが無線電波を通じ、インターネット網で全世界が分散型の巨大ネットワークシステムになっていく。その時はマイクロソフト、ひいてはアメリカに支配されたソフトウェアではなく、オープンで自由なソフトが基本になるべきなのだ。 

それがまさにトロンなのだ。それが日本から発信されることを、喜び、早とちりする人は、
西欧の神は死んだ、今こそ多神教の東洋の神が勝ったというが、それは贔屓の引き倒し間違い。

私はクリスチャンである。確かに、共生、自然との調和は、仏教を始め東洋の哲学(仏教は宗教でなく哲学という人もいる)の特長ではあるが、もし、勝った負けた、という次元で論ずるなら、多神教という名の一神教が勝ったということになる。神の定義からして神は唯一つ、全ての根源であるべきだ。真、善、美の絶対価値を実現するために人間は生きるのだが、人間は不完全で、弱い。したがって、宗教が存在し、神の側から色々な救済を与えているのである。人によって、それはキリスト教であり、仏教であり、イスラム教であるが、
人間側から神を認識すると、人間の不完全性、弱さから、その認識が色々あるのは仕方が無い。

  
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プロフィール

1934年生まれ、長崎市出身、 

1957年、東京大学法学部卒、 
1982年MIT,スローンスクール、SECコース終了。 
三菱電機では、名古屋地区で15年、 
その後アメリカで10年、販売会社社長、
三菱電機アメリカ会長を歴任、 
1984年帰国後、海外事業本部、部長、取締役、
海外営業本部担当常務、 マルチメディア担当常務、
デジタル放送事業担当専務を歴任後 
1998年退任、株式会社セネットを設立、 
トロン関連事業を推進、現在、同社取締役会長。 
2005年2月から、学校法人活水学院理事長。 
趣味はピアノ。 
還暦記念にラフマニノフピアノ協奏曲2番を
都市センターホールで演奏。
日本基督教団鎌倉雪ノ下教会会員
 

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