星 の て が み

クラシック!?ジャズ!?ポピュラー・ミュージック!?
誰がいつどこで線を引いたのか!?
古田茂稔・20世紀のクラシックを弾く。

古田 茂稔

 
12月のリサイタルのプログラム解説を作ってる。
11月に入ったら暖かい日が続く。
実はここが南半球で、これから夏が来るのかもしれない・・と思ったりした。

爪の伸びるのを、じっと眺めるラヴェル。
一瞬たりとも世界は同じではなく変容している。
ベルクソンの哲学みたいだ。
一瞬たりとも私は同じ私ではない。
モーリス・ラヴェルーフランス近代の作曲家。
ベートーヴェンよりもジャズに興味を覚える、ラヴェルの曲は、
聴く側と少し冷たく距離を置くようなところがあるので、
演奏家が色気を出しすぎると間違う。
彼は演奏会で自分の曲を聴くのは余り好きではなかったようだ。
簡素な透き通った美。ラヴェルの余り演奏される機会の少ない、
死後出版のソナタ(1897)ー死後出版だけど若いときの作品ーと、
もうひとつはかなり有名なツィガーヌ(1924)を演奏する。

このソロ・ソナタに取り組んでると、自分が今までにない全く新しい言語を習得していく過程にあるような感じを受ける。
バルトークは、祖国ハンガリーだけでなく、あらゆる国の民族的な歌、土着的な音を収集していた。
晩年、ニュー・ヨークでは音に過敏になり、あらゆる人工的な音を嫌った。
ソナタの各楽章毎の最後に、演奏所用時間が秒数単位で書かれてある。
もちろんその時間通りに演奏しようなんてばかげてるけど・・
何事においてもそのくらい彼は正確な数字にこだわった・・。

ガブリエル・フォーレ晩年の、ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番ーはるかに頻繁に演奏される一番とは
かなり年の差がある。第一番が1875年、この第二番は1917年作。
ラヴェルよりかなりロマンティックかつ印象派的なイメージのある彼の晩年の力作・・楽しみです。

イザイは、フランスで活躍したベルギーのヴァイオリニストで作曲家。
ー 私たちヴァイオリニストの師匠の師匠のまた師匠ぐらいの人です。
彼は当時の華やかなヴァイオリニスト6人に1曲ずつソロ・ソナタを献呈してる。(1924)

今回演奏するのは、その第二番、ジャック・ティボーに捧げられたもの。
第一楽章にバッハの無伴奏パルティータ三番のプレリュードの断片をちりばめて即興的に展開させてゆくユニークなもの。
第一楽章・プレリュード、第二楽章・メランコニア(倦怠)、第三楽章・サラバンドー影たちの踊り、第四楽章・復讐の女神。

今回のリサイタルは20世紀中心のもの・・
しばらく自分は、ベートーヴェン、モーツァルトから意識的に離れてみる。
新しいもの(クラシック音楽のジャンルの中では)を中心にやる・・

そこから何が自分に見えてくるか。

  
column66

プロフィール

福岡音楽学院で5歳よりヴァイオリンを学ぶ。 
桐朋学園大学ヴァイオリン専攻。桐朋学園大学卒業。 
同大学研究科修了後、アメリカ合衆国に渡る。 
インディアナ大学音楽学部ヴァイオリン専攻。 
学院でパフォーマー・ディプロマ取得。 
ノースウエスタン大学音楽学部 

マスター・オブ・ミュージックを取得。 
1996年と1999まで、

シヴィック・オーケストラ・オブ・シカゴの
ヴァイオリン奏者。 
1999年より2006年まで、

サン・アントニオ交響楽団第一ヴァイオリン奏者。 
これまでに、朔望、江藤アンジェラ、江藤俊哉、 

江藤アンジェラ、フランク・グッリ、 
ブレア・ミルトン、ライナー・ホーネックの各氏に師事。

現在、演奏活動とともに後進の指導にあたっている。 
ヴァイオリン教室『フリッツ・ナタン』主宰。

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